Ⅱ章 治療法


胃癌手術後のクリニカルパス

 胃癌手術に関する共通のクリニカルパスを策定することは非常に困難である。しかし,「基本的なパス」を提示することは,胃癌外科治療の均てん化にも寄与すると考えられる。胃管抜去,水分開始,食事開始,抗生剤投与,補液,検査日,退院日(術後8~14日目)などの臨床項目を設定し(表3),胃切除後の基本パスを作成した。退院基準は体温37℃以下,食事1/3以上摂取,疼痛コントロール可,とした。胃全摘術,幽門側胃切除術,噴門側胃切除術を共有パスで運用し,開腹手術,腹腔鏡手術も同じパスとした。ただし,重度の循環器,呼吸器合併症,肝疾患,腎障害などを有するハイリスク症例は適応から除外する。最近ではERAS(enhanced recovery after surgery)プロトコールにて術後の早期回復を促す試みがなされてきているが,胃癌での評価は今後の課題である。

幽門側胃切除,噴門側胃切除,胃全摘共通パス
表 3 幽門側胃切除,噴門側胃切除,胃全摘共通パス