Ⅲ章 資料


生検組織診断分類(Group分類)の取扱い

 胃癌取扱い規約第14版において,胃生検組織診断分類(Group分類)の取扱いが以下のように変更になった。これは,Vienna分類(国際的比較のための分類)および大腸癌取扱い規約(第7版補訂版)との整合性を考慮し,従来の異型度分類から病変の質的な分類へと変わったものである。これにより,Group分類では病変に対する病理医の質的判断を示すことになり,また生検組織の病理診断記載に当たっては組織診断名を記載した上でGroup分類を付記することとなった。この改訂では特にGroup 2の取扱いが重要となる。胃癌取扱い規約第14版の解説(66~68頁)を熟読されたい。
 一般に,生検組織診断は以後の治療方針に大きな影響を与える重要な検査法であるが,材料に制限があり,圧挫などの人工的変化が加わることがあるので,その診断・解釈は慎重でなければならない。


生検組織診断分類(Group分類)(胃癌取扱い規約第14版による)

Group X
生検組織診断ができない不適材料
Group 1
正常組織および非腫瘍性病変
Group 2
腫瘍(腺腫または癌)か非腫瘍性か判断の困難な病変
Group 3
腺腫
Group 4
腫瘍と判定される病変のうち,癌が疑われる病変
Group 5

Group分類に用いられる病理診断のアルゴリズム

図11 Group分類に用いられる病理診断のアルゴリズム
図 11 Group分類に用いられる病理診断のアルゴリズム

Group分類への推奨される臨床および病理の対応

Group X:
生検組織診断ができない不適材料
再生検
Group 1:
正常組織および非腫瘍性病変
必要に応じて経過観察
Group 2:

腫瘍性(腺腫または癌)か非腫瘍性か判断の困難な病変
このGroupには確定診断できない病変が含まれる。次のような症例が含まれる可能性が高く,それぞれ臨床対応が異なることがある。

(1)
組織量が少なく細胞異型からでは腫瘍性病変(腺腫または癌)としての判断が困難な症例では,臨床的な再検査を行い診断の確定を試みる。
(2)
びらんや炎症性変化が強く腫瘍(腺腫または癌)か非腫瘍かの判断が困難な症例では,臨床的に消炎後再生検を行うか十分な経過観察を行う。
(3)



病組織の挫滅や障害が強く腫瘍(腺腫または癌)か非腫瘍かの判断が困難な症例では,臨床的な再検査を行い確定診断が必要である。またこの診断を行う場合,病理側としては,まずは深切り切片などを作製し追加検討を行う。
さらに幾度かの検査において連続して本診断がなされる場合には,専門家への病理コンサルテーションを行うことを奨める。
Group 3:
腺腫
内視鏡所見(大きさ)を参考にして,必要ならば内視鏡的切除(EMR,ESDなど)を行う。
Group 4:

腫瘍と判定される病変のうち,癌が疑われる病変
大きさや内視鏡的な性状を確認し,再生検や内視鏡的切除(EMR,ESDなど)を行い,確定診断を試みる。
Group 5:

種々の画像診断(大きさ・深達度など)を参考にして治療法などを考慮する。

Group分類に対する病理および臨床対応表

表 4 Group分類に対する病理および臨床対応表
表4 Group分類に対する病理および臨床対応表