付 胃悪性リンパ腫診療の手引き


文 責

<日本胃癌学会胃悪性リンパ腫治療ガイドライン作成委員会>

石倉  聡
(国立がん研究センターがん対策情報センター多施設臨床試験・診療支援部)
石黒 信吾
(委員長/PCL ジャパン病理・細胞診センター)
小寺 泰弘
(名古屋大学消化器外科)
鈴宮 淳司
(福岡大学筑紫病院内科第二)
土井 俊彦
(国立がん研究センター東病院内視鏡部)
中村 常哉
(愛知県がんセンター中央病院内視鏡部)
柳澤 昭夫
(京都府立医科大学人体病理)

<日本胃癌学会ガイドライン評価委員会>

坂田  優
(委員長/三沢市立三沢病院)
糸井 啓純
(明治国際医療大学外科)
大津  敦
(国立がん研究センター東病院臨床開発センター)
小泉 和三郎
(北里大学東病院消化器内科)
下田 忠和
(国立がん研究センターがん対策情報センター多施設臨床試験・診療支援部)
前原 喜彦
(九州大学消化器・総合外科)

はじめに

胃悪性リンパ腫(以下胃リンパ腫)には,MALT リンパ腫(low grade B-cell lymphoma of MALT type)とびまん性大細胞 B 細胞性リンパ腫(Diffuse large B-cell lymphoma,以下DLBCL)をはじめとして,濾胞性リンパ腫,マントル細胞リンパ腫などの B 細胞腫瘍,また成人 T 細胞白血病リンパ腫などの T 細胞腫瘍がみられるが,MALT リンパ腫と DLBCL 以外は稀な腫瘍である。
今回は,この MALT リンパ腫と DLBCL について,「胃悪性リンパ腫診療の手引き」を作成した。
これまで日本では,胃リンパ腫を胃癌と同様に局所的な疾患として取り扱い,外科切除できるものは手術するという考え方で治療されてきた歴史があり,現在でも胃リンパ腫の治療として外科切除を第一選択とする施設もある。しかし最近では,胃リンパ腫の治療は,節性や胃以外の臓器の悪性リンパ腫と同様に,化学療法や放射線治療など,非外科的な治療法が主体となってきている1)。また,臨床病期によっては局所的な治療から系統的な考えに基づいた治療法が必要とされるようになりつつある。
適切な治療法を選択するには,正確な組織診断と臨床病期診断が必要であり,その診断に対する知識が不可欠なものと思われる。
一方,胃リンパ腫の治療については,非外科的な治療が主流になったとはいえ,現時点では,エビデンスレベルが高い研究は少なく,胃癌のごとくの厳密な「診療ガイドライン」の作成は困難であると考えられ,「診療の手引き」とした。
今回は,現時点での,胃リンパ腫の組織診断,臨床病期診断の指針と,ある程度のコンセンサスが得られているものを中心とした治療についての指針の総合的で実践的な手引き書として,利用しやすく読みやすいものを目標として,胃リンパ腫の診療の手引きを作成した。この手引によって,胃リンパ腫に対する診断と治療の現状が,一般臨床医に広く認識して頂けると幸いである。